あわや墜落から那覇空港到着

撮った写真を整理しているとこれが着陸前最後の1枚だったようです。私は初LCCなのでかなり写真を撮りまくっていました。もし堕ちていたとしたら、前のページに貼った機内の様子は、数ヵ月後、数年後？別の形で報道に使われたいたかもしれません。

この写真のあと、着陸態勢に入り、iPhoneの電源も切ります。私は機内の飲み物等は頼んでいなかったのでゴミもなく、少なくとも私が座ってた近辺の方は何も頼んでいなかったと思います。

徐々に高度を下げ、雲の中へ入っていきます。このあたりだったか、離陸直後だったか忘れましたが、那覇空港が雨というアナウンスがありました。このとき何を考えていたかといえば、これといって何も考えてもいませんでした。ドキュメンタリー番組的にはここら辺は「緊迫の10分間」みたいな時間帯ですね。でも普通に着陸していると思っているのでそんな危機感はまるでないし、他の乗客の方も同じだったはずです。

このときの機内はとても静かでした。聞いたところでは乗客の中に幼児1名ということ、動き回る子供もいないし、ただ静かに那覇空港着陸を待っていました。

そして、あの瞬間がやってきます。私は前の席のブランケットに入っている機内誌を見ながら、外を見ると厚い雲でした。

しばらくすると、雲を抜け、海が見えました。一気に海面が近づいてきます。もう着陸か？時計を見ると11:45過ぎ、思ったより早く着けそうとおもったそのときでした。突然フワッとゴーアラウンド(着陸やり直しの急浮上)。

乗客もCAも「お？どうした？」声は上がりませんでしたが、一様にそんな空気。

しかし、画像のFlightrader24サイトのログと、あとの報道によれば私が見えた海面は空港手前どころか7km手前だったと。高度100mでGPWS地上接近警報装置が鳴り、高度75mのところでゴーアラウンドしていたということ。あと20秒遅ければ海の藻屑と消えていたそうです。ちなみに、GPWSは客室まで鳴り響くのでしょうか？前から3番目に座っていた私にも警告音は聞こえませんでした。だからといって聞きたいとも思いません。操縦席だけで鳴っていただければそれで結構です。

さらに本来よりも5km手前から着陸態勢に入っていたことも明らかになっていきます。ちょっと早いなと思った違和感はこれだったのかもしれません。ちなみに海面が見えたとき、不思議に思わなかったのは那覇空港は海に面しているため、南北どちらから着陸するときも必ず海側になるからです。このときは北側から着陸していました。

さて、ゴーアラウンドしてから、私は悪天候でやり直すのだろうと直感はしていました。また、初のゴーアラウンド経験だったの実はウキウキしてしまったり。すると、CAのリーダと思われる方が「悪天候のため着陸をやり直します」とアナウンス、まずは私たちに一報を入れました。

このアナウンスについて「嘘をついた」「機長が指示した」など間違った報道がされています(毎日新聞、沖縄タイムスなど)。CAの方は機長に指示されたのではなく、マニュアルでそうなっているのか、とっさの判断だったのかは不明ですがアナウンス用の受話器を取って独断でアナウンスしたのです。そもそもあの受話器から機長に確認を取れるのかわかりませんけど、機長に連絡を取っていません。

独断というとまたピーチが非難されそうですが、逆に私たちは安心しました。ここで墜落寸前でやり直しましたとか言われたらパニックになっていました。問題あるなら後から訂正すればいいのです。

ただ、「墜落寸前でした」などのアナウンスはなかったと思います。何しろ、機長ですら正常に飛んでいたと思っていたわけです。あとから管制塔からの指示を「勘違い」したと弁明していますが、あのとき乗り合わせた乗員乗客59名、誰一人危険な状態であったという認識がまるでなかった。「正しく伝えるべきだった」というなんか報道もあったけど、誰もが普通に思っている中ではアナウンスされるはずもありません。

アナウンスがある前から、混乱はなく苛立ちの空気が漂っていました。ただでさえ遅れてるのに、さらに遅れる。私も時計を見ながら友人を待たせてしまうな･･･という申し訳なさ。そのうち、左手に那覇空港の滑走路が見えました。見た限り、滑走路上は濃い霧がかかっているわけでもなく、決して視界が悪そうには思えません。あのあと、私もいろんな想像はしてみたけれど、実際あの瞬間、機長室で何が起こっていたのかはわかりません。

しばらくすると、機長からCAに連絡が入っているのが見えました。すると「10分後に再度着陸体制に入ります」のアナウンスが流れました。これが飛行中最後のアナウンスです。濃い雲の中を旋回を続け、再度着陸態勢に入ります。窓の外を見てると徐々に海面が近づいてきて、そのとき那覇空港の貨物兼LCCターミナルが見えました。自分は何度も那覇を訪れていたわけではないので空港周辺のことは知りませんでした。だからゴーアラウンド前(海面)と実際の着陸の光景(貨物ターミナル)はまるで違うということに気付くのは後のことでした。